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エキサイティングな人生を

仕事とジャニーズにまみれる日々

朝井リョウさんの「武道館」を読んで(ネタバレあり)

なにで読んだのか忘れたが、朝井さんとつんく♂さんの対談かな?「ここで一度今のアイドルを文字に残しておきたかったんです」という自身もアイドルが大好きだという朝井リョウさんのコメントを読んだ。これは一度読んでみなくてはと思い、Kindle電子書籍版を購入した。
 
 
自身もアイドル好きとあって、かなりファン心理が詳細に書かれているなと思った。サムライさん(熱心なファンの1人)が、直接語るのではなく基本的には愛子(アイドルの1人/主人公)目線というところがよかった。初めて朝井さんの作品を読んだが、ん?という書き出しからああ!と理解させるような書き方が多く、途中でどこの誰が話してるのか混乱はした。印刷会社の社員目線や舞台監督、コンサートのアルバイトスタッフ目線。確かにこういう側面からの意見も入ってくると状況が分かりやすくなるけど、中途半端に短くて書くならもう少し欲しいかなと感じた。笠原って誰?となってしまって終わりももう少しアイドルの感情的なとこを入れてほしかった。
 
 
私自身が熱心な女性アイドルファンになったことがないから、終わりが見えるってファンも辛いなって思った。亀ちゃんがいくら俳優業やろうとも、シゲが本書こうとも、大野くんが絵を描こうとも、やっぱりファンは踊ってる姿が好きだし、歌ってて欲しいと思っているからだ。そこらへん女性アイドルファンはどう思っているんだろうか?この主人公も途中で「女優になりたいわけでも、タレントになりたいわけでも、歌って踊ることが好きで、だからアイドルになりたかったの。」と幼馴染に悩みを打ち明ける。
 
私も流行り程度にはモーニング娘が好きだった。なっちは可愛かったし、よっしーの男っぽいさばさばした感じも好きだった、安田ちゃんのいじられキャラだって、チームの中には欠かせないキャラクターだったと思っていた。小説の最後のように、モーニング娘も最近OGが集まって歌うことがあるが、見ていて素直にかっこいいと思う。どうして彼女たちは、自分のグループを卒業しなきゃいけなかったんだろうか。プロデュースしにくいんだろうか?それとも年齢が上がるとファンが興味なくなってしまうから?女性アイドルファンは変わらない若さに魅力を見出しているんだろうか。だから鮮度が悪くならないうちに、次の世代を、となるんだろうか。
 
 
「何度も話したけど、このタイミングで二期生を入れようと判断したのは、大丈夫だと思ったからだ。個別に仕事も決まってくるようになって、人数を増やしてもこの五人は埋もれない、ブレることもない、そう思ったから、グループ自体が長く続くように二期生を入れた。」
 
事務所の人がこう語る場面があるが、やっぱり私には理解しきれない文化があると思ってしまった。メンバーの増減って追ってるファンからしたら辛いことだと思ってしまうからだ。だからやっぱりジャニーズと女性アイドルグループってちょっと文化が違うなと読みながら思った。
 
 
最近だとドリボの舞台観劇マナーでひと悶着あったが、学生ファンが多い時代はマナーを知らない子が多いからどうしてもこういった内容で揉めるし、クラスの女子と仲良くしてるとか、元カノは誰だとかとっても騒がしい。けど、若いファンのパワーってすごい。まっすぐ彼らが好きだと思っている子が多いからだ。そのうち、そんな時代も終わってグループとともにファンも成長して、どうしたら彼らがもっと上に行けるのか、彼らはファンにどうあって欲しいのかというのをファンも自分たちで考えるようになる。時にはファンの数が増えずに苦しい時期もあるかもしれない。東山さんも少プレで「3年周期でやってくる波」についてお話されていた。苦しい時も真摯に向き合うことで次に繋がるとメンバーたちも分かるようになり、がむしゃらに頑張りつつも今いるファンをより大切にしようと考えてくれる。そして迎える10周年、20周年の節目。お互いの大切さを認識しあい、次のステージへと進む。
 
このお互い成長しあっている感じが楽しいのに、それを味わえないのはつまらないなと思ってしまった。
 
 
あと、一つ自分が感じた部分は「怒りや態度や言葉として人間の外側に現れたとき、その人の器にはもう何も入らなくなっている。つまり、怒るということは、自分の中にある器の許容量や、形をさらけ出すということだ」と主人公が怒るという感情を理解しようとしていたとこだ。確かに自分の好きなものを貶されたときの自分の器の小ささを実感することはあるが、そこに母親が子どもをしかる時の「怒る」という気持ちまで一緒にしてはいけないと思った。
 
「お母さんの器は、愛子が決まりを守らなかったり、言われたことをやらなかったりすると、すぐに溢れてしまう。」とあるが、器が溢れてしまってるのではないと思った。自分も最近人を雇うという立場から、怒ることがあるが決して器が溢れてしまっているから怒っているのではない。言葉で表現するのは難しいが、簡単に言ってしまえば、それは相手のことを思う心の余裕があるから怒れるんだと思う。自分がいっぱいいっぱいの時には適切なタイミングで怒るのがめんどくさくなってしまうからだ。まあいいか。そんな風に思ってしまう。困るのは自分ではなく、彼らなんだからと。だからこの怒るという部分を主人公が理解しようとしている時に、母親の話まで持ってこなくてもよかったのかなと思った。だってお母さんは決まりを守れない子どもに対してむしゃくしゃしまくって怒鳴っているわけではないからだ。(状況次第かもしれないが…)
 
 
いろんなことを考えながら読ませていただいた。こんだけ色々書いたが、素直に楽しかった。普通に感情移入してしまって、最後は泣いていたもの。
 
 
波奈の卒業時の言葉がとても好きだった。私もアイドルファンの1人。変化に大いに期待して、その変化をこれからも楽しみたいと思った。朝井さんが今のアイドルを言葉にしておきたいと思った気持ちが分かった気がした。ぜひみなさんもアイドル好きならご一読くだされ。
 
波奈の卒業時の言葉
「ライブを"授業参観"って呼んだり、スキャンダルを撮られた子女の子が頭を丸めたり、握手券を付ければCDが売れたり…そんなの、すっごく最近のことでしょ?ここ数年でそうなったことでしょ?だから、これまでみたいに、これからも、いっぱいいっぱい変わっていくの、多分」
「今目の前にあるほとんどは、最近生まれたものばっかり。ずっとずっと昔から当然だと思われてきたことなんて、実はほんのちょっとだけ。だから、目の前にあるほとんどは、これから新しく生まれ変わる。たとえば、握手なんかじゃなくて、歌って踊る姿をもっと見たいとか、そういうふうにまた変わるかもしれない」
「だからね。なんか変だな、この仕事向いてないのかなって思ったときは、変わっていくことを思い出して。みんなが直面して、悩まされているもののほうが実は、これから変わっていくものなのかもしれないの。」